【五条悟:夢小説】#1 夢の現実に落ちたなら

五条悟 夢小説 月夜の夢帳(夢小説)
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眠る直前の部屋は、世界でいちばん静かだ。

誰にも邪魔されたくない、邪魔させない私の1人だけの時間が始まる。
照明を落として、スマホだけが白く光っている。
画面には、もう何度も見返した彼が映る

五条悟

「……はぁ……めっちゃカッコいい…♡」

思わず息が漏れる。
推し、という言葉では軽すぎる存在。顔も声も強さも、そのキャラ設定全部ずるいんだって。
社会にもまれて、疲弊したワタシの心を癒してくれる。

分かってる。
そろそろやめないと明日がツライってことくらい。

「あ〜明日会社休んじゃおっかなぁ〜!!」

なんて
思ってみたところで、そんな勇気もない。

名残惜しくも、
ルナは目覚ましのアラームをセットしてスマホを伏せた。

せめて夢の中で会わせてくださいと神様に祈りながら枕に顔をうずめて、目を閉じる。

…意識が薄れて…
そして意識を取り戻したとき思う。

あぁ、知ってる。
またこの夢だ。


夕暮れの住宅街。
昼と夜の境目で、空気が静かに息をひそめている。
遠くで車の音とカラスの鳴き声。

手にはコンビニ袋。
制服の袖が視界に入った。

夢の中で、何故か
ルナはいつも高校3年生に戻っている。

学校帰りはいつも寄り道。
路地裏へ足を踏み入れて

「お〜い、持ってきたよ〜」

しゃがみ込んで声をかける相手は
ワタシの声に反応して姿を見せた。

にゃ〜ん…

段ボールの影から駆け寄ってくる
少し痩せてる、小さな猫。

「ちゃんと食べな〜おっきくなれないよ?」

袋から猫缶を出して地面に置く。
猫は音も立てずにそっと近づき、顔を埋めた。

ここ最近、よく見る学校帰りの放課後の夢

夢?

いや、これは現実だ。
少なくてもワタシの夢の中の現実世界。

「…うちで飼ってあげたいんだけど、アパートだから連れていけないんだ…ごめんね」

ルナは猫の頭をそっと撫でた。

そんな、どこにでもいる普通の女子高生を
電柱の上から見下ろす影があった。

「……またいるな…」

五条悟は
妙な女子高生を見つけ、数日間遠くから観察を続けていた。

(やっぱ見えてるし、触れてる…)

―なにか、やり残しでもあるのだろう。
―死んだ猫の霊。
祓う必要のある呪いの類ではなく、彷徨える魂。

普通の人間には絶対に見えることのない
そんな弱々しい魂を、完全に具現化させて見ている。

それに全く気づきもせずに自然に餌をあげている。

(無自覚型か。しかも……厄介…)

五条が考えあぐねている矢先のこと。

路地裏の空気が、ぴたりと凍った。
猫が顔を上げ、低く唸る。

「……?」

ルナは金縛りにでもあったかのように、背中が冷たくなり動けなくなった。
嫌な予感。
理由は分からないのに、確信だけがある。

壁から、黒い影が滲み出す。
人の形を歪めた存在。

「ッ!!?(……!!なに、あれ!?)」
ルナの呼吸が一瞬止まった。

いつも見ている夢…の中にこんな危ない夢なんてなかった。
ただ、猫と戯れるハートフルな夢だったはずなのに…!!?

現実の意識が混ざり合う

夢でしょ?起きろワタシ!!今すぐに!!

ルナは自分が何を考えているのかもわからなくなり
襲いかかる黒い影を前に、唸る猫を必死に抱きしめて目を瞑るしかできなかった。

――やばい!!

そう思った瞬間。

「はい、そこまで」

空気が弾けた。


視界に、白が割り込む。
気づいた時には、五条悟が目の前に立っていた。

「危ないよ、高校生」

軽い口調。
圧倒的な安心感。

青白い光が走り、一瞬で影は跡形もなく消えた。

私は、その場に立ち尽くす。

「え……?」

五条悟は振り返り、こちらを覗き込んだ。

「怪我ない?」

「……はぁ!?(あれ?五条…悟!!?)」

「『はぁ!?』って…それ、今呪霊に襲われた女子高生の反応?」

いやいやいやいや、ちょっと!!
ちょっと待って!!?

ルナは呪霊に襲われた恐怖を、五条悟の顔面の破壊力で完全に上書きされていた。

「ごッ…(五条先生!!??)え??」

五条はルナをじっと見つめた。
ルナはポカンと口を開けたまましゃがみ込んだ。

「ちょっとごめんね。」

五条はルナに近づき、不意に顎を掴んで顔を強制的に引き上げる。
そして探るように瞳の奥を覗き込む。
目の前にナマ五条悟

 距離が近い。
 ビジュがいい。

アイマスク越しの、あの瞳の色を想像し
ルナは正直発狂寸前だった。

「だーいじょうぶ。もう君を襲ったヤツ祓ったから。」

 違います。
 それじゃないです!
 ワタシが仰天してるのはっ!!

ルナは声を出せないまま挙動不審にアワアワするだけだった。

(……なるほどね呪力が自然に循環してる…。)

五条はルナから離れ、少しだけ声を落として話かけた。

「その猫さ」

夕焼けの中で、世界がやけに静かになる。

ルナは、はっと我に返った。
抱きしめている猫の感覚が、徐々に薄れるのを感じて、腕の中にある猫に視線を落とす。

「もう、ずいぶん前に死んでる」

――その言葉とともに
猫は瞬く間に、その温もりを無くし
ルナの腕の中で光を放ちながら消えていった。

五条を見やると、腕を組んでルナの様子を静かに伺っている様だった。
夕日越し
逆光でその表情まではルナにはわからなかった。

 沈黙が続く…

ルナ
今日、この日をもって
猫と戯れるハートフルな夢を一生見ることはないんだろうなと感じていた。

その代わり
ずっと会いたかった五条悟が存在する世界線へ…

思わず胸の前で手を合わせた。

(あの猫がきっと五条悟を連れてきてくれたんだ。猫神様に感謝…)

目を瞑って祈る姿に
頭上から五条のフッと笑う息遣いを感じた。

「今からちょっと、時間ある?」

目を開けたらそこに、間違いなく五条悟。

ルナは、ゆっくりうなずいた。

二次元なのか、三次元なのか
夢なのか、現実なのか

そこはきっと夢の世界だけど、ルナ自身に起きている現実であることだけは

事実――


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