【ど派手な鬼狩り】 自己都合(短編ep.2)

月夜の夢帳(夢小説)
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その日の任務は珍しく、蝶屋敷から数人手伝いが出ていた。

負傷者の応急処置
一般人の避難誘導が主だが、
鬼狩りの現場ともなれば危険を伴う後方支援を任せる場合もある。

その中にルナの姿を見つけた瞬間、俺は眉を寄せた。

「なんでお前が来てんだ」

「なんでって、人手不足だから」

いつもの調子で平然と返してくる。

「お前は戦闘員じゃねえだろ」

刀も握れない。
蝶屋敷に雇われて、ものの数週間しか経ってない。
わかってんのか、この状況。

「お前、そこに隠れとけ。絶対出んなよ。」

「え、隠れ…それ何もするなってこと?」

「当然だ。」

「応急処置くらいさせてよ。」

ムスっとするルナを見て嫌な予感がした。

こいつ、絶対無茶する。
目ぇ光らせとかねぇと。

任務自体は順調だった。

鬼の数も思っていたよりずっと少ない。
隊士たちも落ち着いて動けている。

これならすぐ終わる。
嫌な予感は気の迷いだったか?

そう思った矢先だった。

建物の陰から鬼の奇襲
最前線からは完全に離れた後方

まずい、と思った時にはもう遅い。

若い隊士が一人、反応が遅れていた。
まだ十代半ばの新人。

間に合わねぇ。
俺が駆けても一瞬遅い。

その瞬間だった。

ルナが前に飛び出したのを見た。

「っ、おい!!おまっ!!」

迷いがなかった。
隊士を突き飛ばして、鬼の爪がルナの肩を思い切り裂く。

鮮やかな血が飛び散った。
音が止まった気がした。

頭が真っ白になる。

気づけば鬼の首を斬り飛ばし
ゴロゴロと地面へ転がるそれの音で我に返る。

ルナ

肩を押さえながら、自分が突き飛ばした隊士に声をかけている。

「無事?良かった…」

ルナは守った隊士を見て笑った。

笑った…

だと?

その瞬間、腹の底がぐしゃっと煮えた。

「馬鹿かお前!!」

怒鳴っていた。

ルナがびくっと肩を揺らす。

周囲の隊士も固まった。
止められなかった。

「出るなと言っただろうが!!」

「隊士がやられるとこだった。」

「だからってお前が傷ついていい理由になんねぇだろ!!」

「あの隊士、まだみずのとになったばかりの新人さん」

ルナは冷静に言い放つ。

「……は?」

「隊士育てるのって時間かかるし」

肩から流れ落ちる血なんて気にも止めない。

「たくさんの鬼を倒す人なの。私の代わりは――」

やめろ、それ以上言うな

「――どうにでもなる。」

ブチっと、と頭の中で何か切れた音がした。

「二度と言うな。」

驚くくらい冷えた声だった。

「お前の代わりなんてどこにもいねぇ!!」

苛立っていた。
怒っていた。
でも一番近いのは、

――恐怖――

もし傷がもっと深かったら。
もし、こいつがここで死んでたら。
その想像だけで胃が冷える。

俺はルナの前にしゃがみ込む。

血が止まってねぇ。

「そんな怖い顔しなくても」

「誤魔化すな」

思わずルナを睨みつけた。

ルナは黙ったが…
そのまま睨み返してきやがる。

痛いだろうに…
怖かっただろうに…
こんなところに来ていなければ、そんな思いをしなくて済んだんだろうに。

なんて気丈に振る舞うんだ…
この女。

本気で
誰かを守ることばっか考えて、自分の価値を後回しにしてやがる。

だから当然のように
自分の代わりはどうとでもなるなんてことを言うんだ。

宇髄は深く一呼吸おいて

「…ルナ

名前を呼んだ。

こいつがようやく
少し不安そうに俺を見た。

「俺は困る」

「……え?」

「お前がいねぇと、俺が困るっつってんだよ」

ルナの目が大きく開く。

なんで?って顔してる。

たぶん
考えたこともなかったんだろう。
自分がいなくなって困る奴がいるなんて。
俺は考えただけで、胸が張り裂けそうだ。

「お前、自分を雑に扱いすぎだ」

血で汚れるのも構わず、その身体を支えた。

小せえ…。

こんな身体で、隊士を庇って鬼の前に飛び出したのかと思うと無性に腹が立つ。

同時に
どうしようもなく愛おしくなった。

「……宇髄さん」

「喋んな」

「怒ってる?」

「当たり前だ」

「あの隊士は怒らないであげて。」

反省の色がねぇ。

「お前、少しはわきまえろ!!」

空気が変わる音がした。

言いすぎた…か。

ルナを見やると、少し困ったように

「…ごめん。」

と呟いた。

胸がどくりと鳴った。

「ごめんなさい。宇髄さん。」

違う。
謝って欲しいわけじゃない。

ただ怖かった。
目の前でお前を失うかもしれなかったんだぞ。

こっちの身にもなってくれ。

「……ほんと厄介な女」

ぽつりと溢れた言葉。

それが俺の本心だった。

「なんかあったかいね、宇髄さんて。」

そう言ったルナから、
少し笑っている音がした。

「もう‥黙れって。怪我に障る…」

――ルナ――

お前のことちゃんと守ってやれなかった挙句
当たり散らして怒鳴りつけたこの俺に

そんな優しく笑わないでくれ。

全部“勝手な自己都合”なんだ。

お前を失いたくないのも。
全部。

全部、自己都合だ。


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【ど派手な鬼狩り】 嫉妬(短編ep.3)