【ど派手な鬼狩り】 嫉妬(短編ep.3)

月夜の夢帳(夢小説)
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任務帰り。
蝶屋敷は、やけに騒がしかった。

数人まとめて怪我した隊士が運び込まれたらしく、廊下を慌ただしく人が行き交っている。

血の匂い
薬草の匂い
包帯の擦れる音

その中心で
ルナが淡々と処置をしていた。

「はい、次」
「傷見せて」

手際がいい
無駄がない

慣れたモンだな…。

初めこそ怖い顔しながら怪我人の処置してたやつが、
顔をしかめることもなく、
必要な処置を適切にこなしている。

だが…

「……///っ」

ルナの処置を受けている若い隊士の顔が赤いとは、これいかに?

宇髄は廊下の柱にもたれながら、じっとその様子を眺めていた。

治療を受けている隊士は、
包帯を巻かれながら、ルナをガン見している。

ルナは気づいてねぇ。
まぁ、こいつはそういう女だ。

自分がどう見られてるかとか
どう思われてるかとか
驚くほど頓着がない。

「痛かった?もうすぐ終わるから。」

「あ!大丈夫です!」

声でけぇな。

宇髄は小さく眉を寄せた。

なんなんだあいつ。
さっきから返事が全部うるせぇ。
しかもルナのこと見過ぎだろ。

ルナは包帯を結び終え、隊士に軽く微笑んで見せた。

「はい、終わり」

その瞬間。

隊士の顔がさらに赤くなる。

宇髄はゆっくり目を細めた。

惚れてやがる。
しかも本気か。
面倒くせぇな。

宇髄は視線を逸らし、廊下の天井を見上げた。

まぁ、
分からんでもない。
ルナは普通にしてりゃそこそこイケてる。

口は強ぇし、
愛想もねぇが、
怪我人の前だと多少柔らかい顔をするようになった。

そりゃ勘違いする奴も出る。

……いや。

勘違いじゃねぇか。
好きになってもおかしくはない。

問題はそこじゃない。
なんで俺がこんな面白くねぇのかだ。

宇髄は舌打ちしそうになるのを堪えた。

くだらねぇ。
隊士が誰に惚れようが勝手だろ。
ルナが誰に好かれようが、
別に関係ねぇ。

……関係ねぇ、はずなんだが。

ルナさん!」

治療が済んだはずの隊士が
まだルナに絡んでやがる。

「その、ありがとうございました!」

「え?」

「助けてもらって……」

「お礼はいらないよ。任務お疲れ様」

ルナはぶっきらぼうに返す。

余計駄目だ。
ああいう奴は、あっさりされるほど沼るんだよ!

宇髄はなんとなく知っていた。

なぜなら、自分がそうだからだ。

ルナは媚びない。

新人だろうが
柱だろうが
怪我人だろうが
態度が変わらない。

だから余計に気になっちまうんだろうがよ!!

「……チッ」

ついに小さく舌打ちが漏れた。

その瞬間
近くにいたアオイがギョッとした顔でこっちを見る。

「う、宇髄様?」

「…なんでもねぇ」

「顔怖いですけど」

「元からこうだろ」

「今のは違う怖さです!!」

くそ、イラつくな…

宇髄は腕を組み直した。

なんなんだ、この感じ。
鬼相手にこんなモヤつくことねぇのに。
むしろ鬼の方が単純で楽だ。
斬れば終わる。

でも今、目の前にあるこれは、
どうすりゃいいのか分からねぇ。

隊士はまだルナを見ている。
ルナは気にもとめず次の処置の準備をしている。

その背中を目で追ってる時点で、俺も終わってる。

あー……
面白くねぇ。

宇髄はガシガシ頭を掻いた。

なんで俺がこんな気分にならなきゃなんねぇんだ。

しかも最悪なのが、
自分でも理由が分かってることだ。

先越されたくねぇ。
取られたくねぇ。

その感情が、
想像以上に腹の底へ根を張っている。

正直、それを認めるのも癪だった。

ルナは別に俺のもんじゃねぇ。

そもそも
あいつが誰と話そうが自由だ。

なのに…

あの隊士がルナ見てんのは、
クソほど気に食わねぇ。

宇髄は深く息を吐いた。

落ち着け。
くだらね。
こんなんで機嫌悪くなるとかガキか。

……なのに。

「僕っルナさんと、もっと話したいんですk…」

意を決したであろう隊士の発言に、
全っ部吹っ飛んだ。

「おい!そこの野郎」

気づけばでかい声が出ていた。

慌しかった空間がシーンと静まりかえる。

隊士がびくっと肩を震わせた。
ルナが「え?」って顔でこっちを見る。

宇髄はそのままズカズカ歩き出した。
止まれなかった。

「宇髄さん?」

ルナが不思議そうに首を傾げる。
その横へ立った宇髄は、隊士を見下ろした。

「お前」

「は、はい!」

「やめとけ」

「……え?」

ルナが目を瞬きながら、訳がわからないと言うように俺と隊士を交互に見やっている。

隊士は固まってる。
宇髄は構わず続けた。

「そいつ面倒だぞ」

「え、何?私??」

自分のことだと察したルナは、スットンキョウな声を上げた。

宇髄は無視して続けた。

「愛想ねえし強情だし無茶するし自分後回しだし怪我しても平気な顔するし言うこと聞かねぇし」

「ちょっと…」

「まじで頑固!!」

「え、なっ…悪口!??」

「事実だろ!」

宇髄はルナに向かって真顔で言い放った。

隊士は完全に圧倒されている。

だがまだ足りねぇ。
なんか知らんが腹の中のモヤモヤが全然消えねぇ。

「あと妙に鈍い!」

「はぁ!?」

「男がどういう目で見てるか全然気づかねぇ」

ルナは唖然としていた。

その顔見た瞬間、宇髄は確信した。

……こいつマジで気づいてねぇのな。

怖ぇ。
無自覚怖ぇ。

隊士の方は今にも死にそうな顔してる。

宇髄は隊士にガシッとヘッドロックをくらわしながら、耳元でこそっと囁いた。

「悪ぃこと言わねぇから、こいつはやめとけ。」

「ぼ、僕は別に……!」

「顔に出てんだよ」

隊士が真っ青になる。

「っ、宇髄さん!!」

「なんだよ、今取り込みちゅ…ぅ」

呼ばれた方向を見やると、ルナがふるふると震えている。

やべぇ…
どうやら本気で憤慨してる。

ルナを怒らせるのは本意ではない。
ただ事実を大声で述べたいタイミングが訪れただけで。

結果、誤解(?)…を生んだわけだが。

ルナには申し訳ないと思いながらも、
宇髄は笑えてきた。

ルナが見せる、
自分にだけ容赦無くぶつけてくる感情が心地良かった。

「……お前が怒ると、安心するわ。」

ルナがムッとしたまま睨んできた。

「何それ。全然わかんないんだけど。」

「はは、悪ィ…クックック…」

「反省の色が見えない!!」

余計拗れたか?

いや、それでいい。

俺と、お前は、
そうやって紡がれていくくらいがちょうど良い。


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【ど派手な鬼狩り】 狩らない鬼(短編ep.4)