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けたたましいアラームが現実世界へ呼び戻す
夢の現実からはっきりと目を覚ましたルナは目をゆっくり開けた。
ベッドから見上げる天井
見慣れた部屋
現実の朝
(……戻ってきてる)
そうだこれが、現実だ
だけど、“さっき”までの出来事が夢だったとは思えない。
だって、あんなにハッキリと
白い髪
黒いアイマスク
脳内に焼きついている「またね、ルナ」という声
「……またね、って何///」
布団に潜り込んでルナは悶えた。
スマホを手に取ると、いつもの通知、いつもの時間。
世界は何も変わっていない
仕事に出かける身支度を整える
――ルナは直感していた。
眠れば、あの場所に戻れる
また、五条悟に会えるんだ
その夜
ルナはスマホ画面を見ることもなく
はやる気持ちを押さえながら迷わず目を閉じた。
(……ただいま、だ)
違和感はない
ここが“今の現実”だと、自然に理解して馴染んでいる
いつもと違ったのは
そこは夕暮れ時の路地裏ではなかったこと。
やけに眩しく感じる朝日を見上げ、ルナは目を細めた。
――東京都立呪術高等専門学校
「早いね」
背後から聞こえた声に、心臓が跳ねた。
「……五条…先生」
振り返ると、そこにいる
存在感が強すぎる
(いる……本当にいる……)
高揚しそうになるのを全力で押さえ込む
「昨日あの後、体調は?」
「え?……あ、はい。なんともないですけど?」
衝撃的な恐怖体験であっただろうに
あっけらかんとして
ヘラヘラしてさえ見えるルナに対して
五条は違和感を覚えた
(……やっぱり)
五条は、昨日からずっと考えていた
あの猫のケース
成仏の仕方
ルナの呪力の出方と、キモの座り方
(希少、って言葉じゃ足りないな)
「ね、ルナ」
少し真面目な声で呼ぶ
「今日は、君の呪力と術式の確認をさせてほしい」
「……確認?」
「うん。昨日の時点じゃ、まだ分からないことが多い」
ルナは一瞬だけ身構えた
「私、何すればいいんですかね?」
「大丈夫、大丈夫。僕に任せといて」
五条は、ルナに付いてくる様促す
ルナはもの珍しいものを見るように校内をキョロキョロしながら歩いた。
(高専の中って、こんななんだなぁ…)
少し離れた空き教室
到着とともに、五条は結界を張る
「じゃ、始めよっか」
五条先生は思った以上にスパルタだった。
安全に守られている状態の中ではあるものの
ルナは低級呪霊に何度も何度も襲われた。
「ヒィぃイィいぃいい!!!(キモいの来たッ)」
「じゃあ、さっきみたいに“感じてみて”」
「やだ、もうヤですってッ!!」
「大丈夫。僕が抑えてる」
呪霊は動けない
“襲えない”のはわかってるけど
「はい、その可愛い呪霊ちゃんをよく見て〜」
「全然可愛くないですッ!!!」
見るに耐え難いグロテスクな呪霊を直視するのでさえ難しいのに
冷静になってその中にある感情を受け取とれというのだ。
「これで最後だから」
最強はいいよね、最強はッ!!
覚えとけよツ
口には出せないけど、悪態だってつきたくなる
…でも好き!!
「ルナ、自分を過小評価しない」
ちくしょう
こうなったらやってやる
五条先生が私に力があるって言うんだから
きっと出来るはず!知らんけど!!
胸の奥が、グッと重くなる
視界が少し揺らいで
呪霊の輪郭が、はっきりと“感情”として見える
ルナはハッとした。
怖さ
寂しさ
怒り
あぁそうか
わかるってこういう事だ
ここまでわかれば、“成仏”?の手助けを…
ルナは、無意識に手を伸ばした。
…何も起きない…
「あれ…」
呪霊は消えない
五条が一歩、距離を取った
――途端に
呪霊の圧が跳ね上がる
「っ……!」
ルナの足が竦む
「ストップ」
五条が即座に戻り、再び抑え込む
呪霊は消えないまま、呻くだけ
五条は、静かに息を吐いた
(……確定だな)
「ルナ」
ルナは、自分の手を見る
「成仏、させられませんね…」
「うん」
五条は頷いた
「君の成仏術式、条件付きだ」
「条件……?」
「僕が近くにいないと、発動できない」
「……え?」
「正確にはね」
五条は淡々と説明を続ける
「僕が周囲の呪力と呪霊を完全に抑え込んで、
“君が安心できる空間”を作らないと、
君の呪力は“寄り添う”ところまで行かない」
「……(まぁ、そうでしょうね…)」
ルナはため息まじりに言った
「私、お役に立てず、期待にも応えられませんね。」
「いや?」
即答だった
「……え、でも」
「正直、それはわかってたから。」
おいっ!!
「え、じゃぁ…なんの確認をしてたんですか?」
「君の呪力、術式を使う時の“目立ち方”?」
「……は?」
「呪霊側から見て、成仏させる術式ってどうやら“美味しそう”らしい。」
…美味しそうって…
「低級呪霊程度で怖がるから見せない様に配慮してたけどさ、
ルナが術式を使おうとすると、1級以上の呪霊が集まってきてたんだよね。」
え…(;゚Д゚艸)
「だから祓える同行者がいないと、
成仏どころか、ルナは真っ先に襲われる」
背筋が冷える――
「……じゃあ、私……」
一人じゃまともに術式も使えない
「でもね」
視線が、真っ直ぐ向けられる
「この術式、正しく使えたら
“祓い”しか選択肢がなかった呪術界を変えられる」
…足手まとい…という言葉が浮かびかけたルナは目を瞬かせた。
「……そう、なんですか…?」
五条は笑う
「そう。そして同行者はこの僕じゃなきゃならない。」
一瞬ドキッとしたことに気付かれないように、ルナは視線を反らせた
「で、次は“心”の話」
「……心?」
「成仏させるたびに、
君の精神は確実に消耗する」
五条は、自分の目を指差す
「僕の六眼なら、呪力だけじゃなく
精神の摩耗も見えるから、必ず僕が同行する」
ルナは即座に首を横に振った
「嫌です」
「え?!なんで即答?!」
「心、覗かれるとか無理です!」
顔が熱くなる
(好きとかバレたら!?死ねる自信すらある!!)
五条は一瞬、きょとんとした
「……あー」
そして、少しだけ真面目な声になる
「誤解してるかもしれないから説明するね」
五条は軽く指を立てた
「呪言師の例、出すけど」
「呪言師って…(狗巻棘!?会いたいっ)」
「呪言師は不用意な能力の発動を防ぐために、日常生活では語彙を絞る」
ルナはうんうん頷いた
「ここの2年に狗巻棘っていう呪言師がいるんだけど――」
――存じ上げております♡
「棘はさ、呪言の反動が“身体”に出る。
喉が潰れる、血を吐く。分かりやすい」
――のどスプレー必須ですもんね♡
「でも君は違う。
ダメージは“心”に出る」
五条の声が、少し低くなる
「それは、外から見えない」
……
「だから僕が見る」
「……あの〜でも」
「見るのは心の健康状態だけ。それ以外は絶対に覗かない。っていうかわからないから。」
(……本当に?)
疑いの目を向けると、五条は肩をすくめた
「信じてよ。僕の目」
言いながら、五条はアイマスクを片目だけ外して見せた
眩しいッ━(艸ε≦●)━ッッ
五条悟のナマ六眼!!!
美しすぎる
美しすぎるッ
吸い込まれそう!!!
刺激が強すぎる!!!
心臓持ってかれそう!!!
「わ……分かりました」
「よし」
五条は満足そうに頷いた
ふと、ルナが空を見上げた
「……私」
小さな声
「役に立てますか」
五条は、いつもの軽さで答えた
「当たり前でしょ」
そして、少しだけ本音を混ぜる
「ルナじゃなきゃ、できないことだから」
言いながら五条はルナの頭にポンと手を置いた。
「大丈夫、ちゃんと守る」
それは
この“夢の現実”から、もう逃げられないという合図。
ルナは、胸の奥の高鳴りを押さえながら、頷いた。
「あ…」
五条が不意に呟く
「え?」
「ほら見てみ?低級呪霊、成仏したw」
「え、今ぁ??」
2人は顔を合わせて笑い合った。
その能力の特異性が発覚するのは
――もう少し先のこと――
