【ど派手な鬼狩り】 怒った顔(短編ep.1)

月夜の夢帳(夢小説)
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宇髄は派手に任務を終えて蝶屋敷へ戻った。

血の匂い。
薬草の匂い。
静かすぎる廊下。

その空気をぶち壊すように、宇髄はいつも通り声を張る。

「派手に戻ったぜ!!」

するとすぐ、ピシャリと鋭い声が飛んできた。

「ちょっと!!静かにして。怪我した隊士がやっと寝ついたばかりなのに。」

……あ?

視線を向ける。
見慣れねぇ女だった。
薬箱を抱えて、こっちを睨んでいる。

鋭い眼光だった。

普通にしてりゃ綺麗だろうに
随分と怖ぇ顔をする。

「お前、見ねえ顔だな」

「それこっちの台詞なんだけど」

お?

間髪入れず言い返す。
思わず口元が緩む。

……へぇ。

なかなかに“間”の合う女だな。

「気ぃ強ぇ」

「失礼な人には大体こう」

言葉に遠慮のカケラもねぇ。

柱と遭遇の際はもっと敬うものだろう?
だがコイツは違う。

俺が誰だか知らないのか。

「お前、蝶屋敷の人間か?」

「先日から…ですけど。」

その時
後ろからアオイが駆けてきた。

「あっ、宇髄様! 任務お疲れ様です!」

すると女が、少しだけ納得した顔をする。

あぁ。
名前だけは知ってたって顔だ。

だが、それでも態度は変わらなかった。

ルナさん、音柱の宇髄天元様ですよ!」

「…のようで。」

ククッ。
いいじゃねーか。
わかった上で態度を改める気もねぇと。

「肝の座ったおもしれぇ女が入ったな」

「褒めてないですよねそれ」

「そう聞こえるか?十分褒めてるだろ。」

「どこが?全然褒めてもらえた気がしません。」

言い返しながら、
ルナは真っ直ぐ宇髄を射抜いてくる。

おお…

逃げねぇ。
珍しい。

アオイが“ルナ”と呼んだ新入り女は、はぁと小さくため息を吐きながら話を逸らした。

「で?ここへ来たってことは怪我か何か?」

「あぁ、少しな」

背中を指すと、ルナは背後へ回った。

……次の瞬間。

「全然少しじゃない!!」

ルナの怒鳴り声が響いた。

さっき静かにしろと言った口が言うもんだから意表をつかれた。

しかも、そこ
大抵の奴は“心配”するとこだろが。

こいつの場合は“怒る”のか。

派手な激怒。
震えるほどに。

「これくらい平気だろ。死んでねぇ。」

「そういう問題じゃない!!こっち来て」

ぐい、と腕を掴まれた。
怪我人相手に遠慮もない。

ルナの迫力に宇髄は益々面白いと思った。

「治療する。座って。」

「命令?」

「“お願い”とか“おねだり”の方がお好みで?」

……はは。
お前、絶対おねだりしないタイプだろが。
…言わせてみてぇがな。

「いいなァお前」

「なにが」

「俺が喜びそうなシャレも言えるとこ?」

「シャレじゃなくて嫌味だっつの‥」

ルナは呆れた顔でブツブツ呟きながら襷掛たすきがけけをする。

治療の手際は驚くほど綺麗だった。

無駄がねぇ。
しかも丁寧だ。

荒事慣れしてる処置。
こりゃ確かに腕がいい。

傷に触れられる。
ズキリと痛む。

だが、その痛みより気になったのは――
コイツの顔だ。

治療中も、やっぱり怒った顔してる。

「これ…痛くないんですか」

「派手に痛ぇよ」

「顔に出ないんですね。」

「出しても治んねぇだろ」

ルナは少し黙った。
その横顔を見てたら分かった。

怒っている理由。

あぁ、コイツ。
“どうやってこの傷を負わされたのか”まで考えてんな。

なんだよ。
優しいじゃねぇか。

「お前は顔に出やすいな。今すげぇ怖ぇ顔してる」

一瞬、ルナの手が止まった。

「そんな顔ばっかしてっと、お前の身が持たねぇぞ。
…ま、嫌いじゃねぇが。」

そう言うと、ルナの呼吸が乱れた。
分かりやすく空気が変わった。

……へぇ。

そういう反応するんだな。

「……口説いてるなら他所でやって」

口説いてるつもりじゃなかったんだが?

「お前…自意識過剰か?」

強がってるが、耳が少し赤ぇ。

調子が狂ってんのは、たぶん向こうだけじゃなかった。

乱暴に包帯を巻かれて思わず声が出る。

「いってぇっ!!」

「死んでないんだから平気、でしょ?」

「根に持つタイプか」

「派手で騒がしい人は苦手。」

「じゃあ慣れろ」

「なんで?」

「指名する。」

ルナはぽかん、とした。
呆気に取られた顔は
幼い子供のような可愛さがあった。

「良い腕してる。悪態吐きながらでも処置は完璧って、大したもんだ。」

言うと、ルナは少しだけ俯いた。

照れてんのか。
それとも警戒してんのか。

まぁいい。
気に入った。

「“ルナ”だったな。」

「……なに」

「俺、今お前のことちゃんと褒めただろうが。」

不満そうな顔をしながらも、どこか嬉しそうで。
だから最後に、軽く頭へ手を乗せた。

…嫌がらねぇ‥

「……『悪態吐きながら』は余計じゃない?」

ルナはちらっと目を合わせた矢先、すぐに視線をそらした。

隠しきれてねーよ。
完全に照れてんな。

だがそこをツッコむほど俺も野暮じゃ無い。

「素直じゃねえなぁ‥ま、いっか。
じゃな。助かった。」

言いながら
素直な良い女だと思った。

去り際に

「宇髄さん」

ルナに名前を呼ばれて振り返る。

「ん?」

「次来る時は静かにして。」

ルナは鋭い眼光で宇髄を睨んでいた。

おいおい。
さっきまでの可愛げどこいった。

面白い。

……最後にもう少しだけ。
お前の心、暴かせてもらおうじゃないか。

「…もう少し“おねだり”が上手になったら、考えてやってもいい。」

背後から「この人ほんと苦手…!!」と小さく聞こえて、思わず笑う。

ルナの怒っている音がする。
無駄に怒らせるのは気が引けるが

怒っているお前の顔は
実は優しい証拠だって俺は知ってる。

任務帰りだってのに妙に足取りが軽かった。

たぶん――
蝶屋敷へ来る理由が増えた。


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【ど派手な鬼狩り】 自己都合(短編ep.2)